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【ねこ】すべての人に「譲渡会」という選択肢があってほしい

 実家のねこが10歳になった。譲渡会に出ていた時は生まれて3カ月と小さくて、それがはじめての「ねこ」との対面だった我が家は、飛んだり跳ねたりダッシュしたり、大暴れするさまにビビりまくっていた。いまではすっかり落ち着いて、貫禄のある茶トラ嬢として、実家に帰ると適当に出迎えてくれたり、くれなかったりする。

 

 「ペットはペットショップで“買う”」ものだと思っていた私に、両親が「譲渡会で譲り受ける」という選択肢を教えてくれた。路上で暮らしていたねこ、いろいろな事情で家を失ったねこ、たくさんのねこたちが譲渡会に集まって、新しい家族を探すのだ。

 実家の茶トラ嬢は「増えすぎて飼えなくなってしまったねこ」の1人で、たくさんのきょうだいがいた。「増えすぎる」とはどういうことなのかというと、飼い主がねこの去勢手術を行わなかったために、こねこがどんどん生まれてしまい、手に負えなくなって「多頭飼育崩壊」の状態に陥ることである。

 つい先日も、多数の犬を劣悪な環境で飼育(と言えないと思うが)していた疑いで、逮捕者が出た。残念ながらこうした事例は犬猫ともに珍しくなく、譲渡会には「多頭飼育崩壊で飼えなくなった」という事情を持つ子がたくさんいた。同じ人間として情けない。

 

 ねこは本当にかわいい。実家を離れてしばらくたち、なかなか茶トラ嬢にも会えない中で、自分の家でねこと一緒に暮らしたい気持ちが強くなった。いよいよ「ペット可」の物件に引越し、私は譲渡会に足を運んだ。

 都内の譲渡会は、朝からなんと100人ほどが列をなしていて驚いた。譲渡会のサイトでは、その日に参加するねこの写真などが載っていて、私はあるこねこに会おうと思っていたのだが、どうやらかなり人気だったらしく、整理券のようなものが配られた。実際にケージの中にいたそのこねこは、とてもかわいかった。かわいかったんだけど、「こんなにたくさん家族になりたい人がいるなら、もう大丈夫かな」と感じて、その場から離れた。1人でも多くのねこが家族を見つけて幸せになる場所、それが譲渡会だと私は思う。

 

 こねこのケージの近くに、黒ねこの5人きょうだいがいた。話を聞けば、この子たちも多頭飼育崩壊から救われた子たちだという。ケージには仮の名前と病歴、ねこの年齢や性格などの紹介が書かれていて、彼らは全員が「推定2歳」だった。

 確かに、体つきがもうこねこではない。大人のねこは、譲り先が決まりにくいそうだ。自分もこねこを探しに来たので、その理由はよくわかる。なるべく長く一緒にいたいし、何よりこねこはかわいい。

 そんなことを考えていたら、5人きょうだいの中で一番体の小さな女の子が、とても積極的にこちらにアピールしてきた。にゃーにゃーと鳴き、ケージから一生懸命に手を伸ばす。譲渡会に参加するねこたちは、緊張のあまりケージの奥でじっとしている子が9割といっても過言ではないが、この子はとびきり愛想がよかったのだ(「もしや、私にだけ?」と思って様子を見ていたら、彼女はケージの前を通る人全員に愛想を振りまいていた)。

 「成猫」という選択肢も、「黒ねこ」という選択肢も、譲渡会に来るまで一切なかった。なので正直、とても困った。めちゃくちゃかわいくて困った。

 

 結果的に、私はこの子といま、一緒に暮らしている。そこまでの過程を、下記にて簡単にまとめておく。あくまでも、私が参加した譲渡会の場合なので、参考程度に見てほしい。

※こちらの譲渡会に参加しました。ねこや保護主さんによっても条件・方針が違うと思うので、「こんな感じ」ぐらいで捉えてください。

yume-neko.net

1.「申し込み」をする

 気に入った子がいたら、会場で「申し込み」を行う。現在の生活環境や家族構成、先住ねこがいるかどうか、ペットを飼っている場合は何歳なのか(いた場合は何歳で亡くなったか)などを用意された紙に記入して、正式譲渡前の「トライアル」に進めるか、譲渡主さんが審査。後日、連絡が来る流れだ。また、申し込み多数のねこは抽選になるという。

 ちなみに私は、「一人暮らし(在宅ワーク多い)・ペット可物件・先住ねこいない・実家に10歳のねこ」といった情報を預けて、無事「トライアル」に進行した。

 

2.家に慣れてもらう「トライアル」期間

 保護主さんが家にねこを連れてきてくれるのだが、そのまえに準備するものがある。

・ねこ用のケージ

・トイレ

・水、ごはん入れ

・ねこ用ハンモック(ケージの中で寝る場所)

※ごはんはもともと食べていたものがいいからか、保護主さんから大量に譲っていただいた。

 ねこが家に来てから最初の1週間は環境に慣れるため、完全にケージの中で生活してもらうことになる。それを想定しながら準備するべし。

 

 準備が整ったら、保護主さんがねこを連れて家にやってきて、さまざまな指導をしてくれる。特に脱走防止策については厳重に説明され、ケージに入っている間に必要なものを準備した。

※うちは玄関前にこれを設置している。

petselect.co.jp

 基本的にトライアル期間は2週間で、うちの場合、1週間は完全にケージの中、2週間目から時間を決めて少しずつ部屋に放して慣れてもらった。

 

3.「正式譲渡」の手続き

 トライアル期間が終わったら、今後もねこと一緒に暮らすか否かを保護主さんに伝える。正式に招き入れる場合は譲渡金を支払い、晴れて「うちの子」になる。

 なお譲渡金とは、ねこを保護してから譲渡会に出るまでの間にかかった医療費などのこと。去勢やワクチン摂取にかかった費用など、だいたい2〜3万円が相場ではないかと思う。

 

 実家の茶トラ嬢は家に来る前にしっかりしつけされていたようで、トイレも粗相しないし、爪とぎも所定の場所で行う。黒ねこ嬢もその辺のしつけはしてくださっていて、今のところ体調面も含めて困ったことはない(家に来てからなかなかトイレをしなかったことだけは焦ったが、1回出すようになればあとは問題なし。ねこも緊張してるのだと思う)。

 そう考えると、初めてねこと暮らす人ほど、こねこはハードルが高そうだ。体調も安定しないから付きっきりで世話する必要があるし、トイレや爪とぎのしつけも自分でやることになりそう。多数のねこを保護し、多数の人に手渡してきた「ねこのプロ」ともいえる保護主さんから譲り受けることは、大きな安心材料だと感じた。

 

 全てのねこがかわいく尊い存在であるということを大前提として、「譲渡会でねこを譲り受ける」という選択肢が、全ての人の頭の中にあってほしいと思う。悲しい過去を抱えながら家族を待っているねこは、残念ながらたくさんいる。

 

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 私はこの子を幸せにして、幸せになろうと思います。これからも末長くよろしくね。